黒川 精さん(50代、神奈川県)

   
2015年の暮れ、右足首のひ骨骨折で全治2ヵ月の重傷という試練が私に突如として降りかかりました。 そして、そのことがエゴスキューメソッドへの道を大きく開くことになりました。 その当時は途方に暮れながらも“どうにかしなければ!”という焦りにかられ、近所の整骨院へ通ったりマッサージを受けたり、スポーツジムへ出向いたりと格闘のような日々を過ごしていました。

それまでに骨折の経験の全くなかった私には、それがどのような回復をしていくのか、どのように、大きくバランスを崩した身体を立て直すのか、身体的な知識もすべもまるで持ち合わせてはいませんでした。

右足だけでなく、左足までもが・・・

ついには、大きくダメージを負った右足の分をずっとかばってきた、左足までもがついに悲鳴をあげはじめ、普通に立ち、静止するという日常的な動作すらも苦痛を感じるようになったときは限界を感じていました。

そんな中、アクシデントの直前に出向いた、雅代さん(※)の講座でたまたま耳にしていたエゴスキューメソッドの情報が、ふと心の隅によみがえってきたのです。

※雅代さん・・・越山雅代。エゴスキューを日本に伝えてくれた人。ロングセラーズ刊『痛み解消メソッド・驚異のエゴスキュー』監修・翻訳者。

エゴスキューで、Let’s☆リハビリ!

「今の私にはひょっとするともうこれしかないのかも知れない」という思いにかられ、すぐにスタジオに連絡をとり、セラピストにじっくりと身体の状態を診ていただきました。そして、数多くのエゴスキューメソッドの中でもその時の身体の状況に応じた適切なエクササイズをいくつか選んでいただき、地道なリハビリに取り組むことになったのです。

自分なりにこつこつと毎日実践していくうちに、あれほどつらかった違和感や疲労感がいつしか消失したときの喜びと衝撃は今も鮮明に覚えています。

長年の取り組みが、オーバーワークの原因に。。

長年にわたってピアノを引き続けてきた私の身体は、いわばもっぱら表現するために存在するものでもありました。

つまり、”日常生活をやりこなすための身体”とは異なる、“音楽と向き合う、もうひとつの身体”も有して長年過ごしてきたわけです。それは、私にとってはごく当たり前の姿であり、私なりに自覚しながら長年にわたって取り組んできたことでもあったのです。

しかし、これが、 自分が想像していた以上に身体にはかなりの負担を強いていたようで、セラピストから肩甲骨のオーバーワークを指摘されたときは少なからずショックでした。

私は、自分の身体、心の在り方に、もう一度ゼロから向き合わなくてはと痛感し、今日に至るまで経験豊富な素晴らしいセラピストの方々からの数々の有意義なアドバイスを受けながらレッスンを継続しています。

そんな日々の中、ふと気付いたこと。

それは、自分はすでに“リハビリの段階を終えつつあるのではないか”ということでした。 はじめは骨折によるダメージを立て直すためのひとつの有効な手段として、エゴスキューメソッドを日常的にも大いに役立て、活用してきた。 そしてアプローチは素晴らしい成果をあげ、私をとても活気づけてくれた。

私の身体は過去のものとは違う、新たなバイパス、とでもいうべきものを徐々に築き始めている。 日々奥深い場所で人知れず脱皮を重ね、ミクロ単位の生まれ変わりを活発に続けている。

その先にあるものとは一体なんなのだろう?

今もそのことについて、エクササイズをこなしながら考え続けているところです。私はどこへ向かっているのだろう。
心の在り方、脳の使い方についてもセラピストからお話を聞く機会に恵まれました。

「頑張り過ぎは脳のクセになるので、ほどよい、心地よい感覚を大切にするように」とのアドバイスは、完璧にこだわる傾向が強く、自分を追い込むクセのある私にとってよい抑止力にもつながっています。

つい無意識に流されがちな身体のクセ、心の偏りに今はあえて立ち止まったり冷静に観察することも、今の私自身に対する課題なのかなと感じています。(まだまだですが・・)

再びピアノと真摯に向き合う日を心待ちに♪♪

自分を厳しくムチ打ち、力でやりとおす従来のやり方とは異なる、静かな進化への促しは、もう一人の自分からのメッセージかも知れません。 今はピアノを中断していますが、再び真摯に向き合う日が訪れたとき、私はどれほど進化しているのか。あれこれと想像しながらエクササイズとともにその時を心待ちにしています。